白内障とは
眼の中の水晶体はレンズの役割を果たしており、そもそもは透明で、光をよく通します。しかし、主に加齢によって水晶体のたんぱく質(クリスタリン)は変性し、徐々に白く濁ってきます。この状態を「白内障」と呼びます。
白内障の患者様はたいへん多く、早ければ40歳頃から発症し、80歳を超えると、程度の差こそあれ、ほとんどの人が白内障の状態にあると言われます。
なお、加齢以外の原因としては、全身疾患(糖尿病など)、薬(ステロイドなど)の副作用、外傷、紫外線などが挙げられます。
白内障の手術
白内障手術は水晶体の濁りを取り除き、人工の水晶体(眼内レンズ)を移植する手術を行います。網膜や視神経、角膜などの他の部分に問題がなければ、視力回復が期待できます。
手術手技が進歩し、超音波水晶体乳化吸引術と折りたたみ眼内レンズによる小切開手術により、手術後の回復が格段に早くなりました。手術時間は5~20分程度で入院なしの日帰り手術が可能です。
通常の場合は翌日、2日後、3日後、1週間後、2週間後、1ヶ月後、3ヶ月後に検診を受けていただきます。目の状態が安定するまでは点眼治療が必要です。両眼手術する場合は2週間ぐらいあけて片眼ずつ行います。






当クリニックの白内障手術について
注射針を使わない点眼麻酔による手術
当クリニックの白内障手術の麻酔は点眼麻酔でおこないます。
注射針を使わないため、麻酔時の痛みもほとんどなく、快適に手術を受けていただくことが可能です。特殊なケースを除き、手術前後・手術中も点滴や注射はおこなわず、点眼薬と飲み薬だけの投薬方法を選択しています。
光眼軸長測定装置による度数決定
当クリニックでは眼内レンズの度数決定に光眼軸長測定装置を導入しています。眼内レンズの度数決定が不正確だと、手術後の見え方の満足度に大きく影響しますが、光眼軸長測定装置は通常用いられるAモード超音波眼軸長の単独測定に比べて、より誤差の少ない正確な眼軸長測定が可能で、精度の高い度数決定が可能になりました。
眼内レンズと手術後の眼鏡について
一般的な眼内レンズの場合
眼内レンズ(人工水晶体)は若い人の水晶体のように厚くなったり薄くなったりしてピントを調節する力がありません。 老眼が進んだ目と同じで、見るものの距離にあわせて眼鏡を上手に使うと、さらに良好な視力を得ることができます。
通常はピントを「やや遠方~中間距離に合わせた」眼内レンズを挿入する場合が多いですが、左右のバランス、手術前の度数、御本人の御希望、職業上の理由などにより、「近くにピントを合わせた」眼内レンズを挿入する場合もあります。
手術前の検査で眼内レンズの度数を決定しますので挿入する眼内レンズの度数をどのようにあわせるかについては手術前に医師とよく御相談ください。
非球面眼内レンズ(単焦点眼内レンズ) 健康保険適応
従来からの球面眼内レンズでは、レンズの中心部と周辺部での結像の違いから生じる球面収差により、特に瞳孔経が大きくなる夜間や薄暗いところでは見え方の質の低下がみられましたが、収差を少なくする非球面構造により、コントラスト感度や像の鮮明度がアップします。

多焦点眼内レンズの場合
眼鏡なしで遠くも近くも見やすくなる「多焦点眼内レンズ」が開発されています。レンズに遠方にピントがあうゾーンと、近方にピントがあうゾーンをつくることで、両方の領域をカバーします。
遠方から中間の広い明視域でより自然な見え方となります ※1

昼間の落ち込みがある(2焦点の)見え方

シンフォニー
※1:画像はシミュレーション画像となります。実際の見え方には個人差がございます。
「眼鏡をほとんど使用しなくて済む」というメリットは大きく、その人のライフスタイルによっては一つの選択肢になります。
多焦点眼内レンズを希望される方へ
多焦点眼内レンズは、20代の時のような見え方に完全に戻すというわけではありません。手術前にご自分のライフスタイルや希望する見え方を医師に伝え、屈折型や回折型の眼内レンズの選択含めて、十分な説明を受けご理解のいただいた上で手術をお受けください。
各眼内レンズの長所・短所
単焦点眼内レンズ | 多焦点眼内レンズ | |
---|---|---|
長所 | 解像度、コントラスト感度に優れている。 | 眼鏡ナシで、遠くも近くもある程度よく見える。 |
欠点 | ピントの合う範囲が狭いため、見る対象の距離によって眼鏡の併用が必要。 | 単焦点眼内レンズに比べてコントラスト感度や解像度が劣り、ハローやグレアを感じやすい傾向がある。 |
費用 | 健康保険適応 | ※自己負担 |
※先進医療特約に入られている方は保険適応になります。
眼内レンズで乱視が軽減できる場合もあります
角膜の歪みによる乱視がある場合は、「トーリック眼内レンズ」で軽減できる場合もあります。
トーリック眼内レンズの種類
レンズの写真 | ![]() |
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---|---|---|
名称 | TECNIS TORIC OPTIBLUE テクニス トーリック オプティブルー |
TECNIS TORIC テクニス トーリック |
円柱度数 | 1.50D 2.25D 3.00D 3.75D | 1.50D 2.25D 3.00D 4.00D |
光学部 | 非球面/着色 | 非球面/クリア |
保険適応 | ○ | ○ |
遠方と近方など複数の距離を見るために眼鏡の使用頻度を減らしたい場合に「多焦点眼内レンズ」を選択する事も可能です。
複数の距離にピントが合う「多焦点眼内レンズ」には、様々な種類があります。おもに、近方(30~50cm)や中間距離(50cm~3m)の見え方に違いがあり、普段の生活の中でよく見る距離などを考えて選ぶ必要があります。
※単焦点眼内レンズは、遠方などひとつの距離しかピントが合いません。
多焦点眼内レンズは、遠方と近方の2つの距離にピントが合います。
最近では遠方~中間が自然で見やすい、新しい多焦点眼内レンズも登場しています。
多焦点眼内レンズの種類
レンズの写真 | ![]() |
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---|---|---|---|
名称 | TECNIS Symfony TORIC テクニス シンフォニー トーリック | TECNIS Symfony テクニス シンフォニー |
TECNIS Multifocal テクニス マルチフォーカル |
焦点 ※1 近方焦点距離 (理論上) |
遠方から中間の広い明視域 (EDOF IOL:焦点深度拡張型IOL) |
遠方から中間の広い明視域 (EDOF IOL:焦点深度拡張型IOL) |
遠方と近方(2焦点) 近方は33㎝ 42cm 50cmの3種類 |
光学部 | 回折型/非球面/着色/トーリック | 回折型/非球面/着色 | 回折型/非球面/非着色 |
コントラスト感度 | 単焦点眼内レンズと同等 | 単焦点眼内レンズと同等 | 単焦点眼内レンズより低い |
グレア・ハローの自覚 | やや有り | やや有り | 有り |
保険適応 | 先進医療 | 先進医療 | 先進医療 |
円柱度数 | 1.50D 2.25D 3.00D 3.75D | ─ | 乱視矯正モデルは無し |
※いずれの多焦点眼内レンズも眼鏡が不要になるわけではございません。単焦点眼内レンズと比較すると使用頻度が少なくなります。
手術適応
- 白内障により、視力が低下したり、かすんだり、ぼやけ、まぶしさなど日常生活に不自由になった方
- 原則的に白内障以外に目の病気のない方
- 眼鏡からより解放されたいと希望している方
- 術後の見え方にハロ・グレア現象などが生じることや、新しい見え方に適応するのに数ヵ月かかる可能性があること、眼鏡が全く必要でなくなることはないなど術後の見え方や医師の説明をご理解していただける方
手術するにあたって注意が必要な方
- 夜間運転/職業上等近見作業の多い方(タクシー運転手、トラック運転手など職業運転手、デザイナー、写真家など)
- 瞳孔径の小さい方
- ドライアイ・角膜混濁・チン小帯脆弱など通常の白内障手術で単焦点レンズを挿入する際にも慎重に検討すべき方
- 白内障以外の目の病気や身体の病気がある等を理由として医師が不適当と判断した方
- 医師の説明を理解していただけない方
白内障の治療スケジュール
手術申込
当クリニックでは白内障手術は全て日帰りでおこなっています。白内障の進行が著しい場合や、他医院より紹介されてすでに手術を決意されている場合にはすぐに手術の申し込みを行います。
術前精密検査
手術を申し込みいただいた方には、「術前精密検査」で手術に必要なデータをおとりします。
眼科検査項目
視力検査、角膜曲率半径、角膜内皮細胞検査、細隙灯顕微鏡検査・眼底検査(散瞳検査を含む)、眼圧検査、超音波検査(眼軸長検査/断層撮影)、その他
体調不良であったり、目や体が極端に疲れていたり、検査直前に飲酒をされたりした場合には正確な検査データを計測できません。
手術前の点眼
手術3日前の朝から手術当日までの間、抗菌剤の点眼をしていただきます。
1回につき1~2滴を点眼してください。
手術当日
- 手術の約1時間前にご来院下さい。
- 手術当日の朝食、昼食は通常通りでかまいません。
- 心電図、血圧計など装着しますのでゆったりした服装で来院してください。
- お化粧はしないでください。
- 来院の際にはご自分で車やバイクの運転をしないでください。
- 手術終了後、しばらく院内で休息していただいたのち、注意事項の再確認をおこないます。 その後、保護眼帯を装着したまま、お帰りいただきます。
術後検診
手術翌日は優先的に検査・診察致します。翌日から点眼治療が必要となります。
ほとんどの方が手術翌日から視力回復を実感できますが、視力が安定するまでの期間には個人差があります。激しいスポーツ、飲酒、長期の旅行などは医師の許可が出てからにしてください。
その後は2日後、3日後、1週間後、2週間後、1ヶ月後、2ヶ月後以降、定期健診で診察と検査を行います。
万が一、異常を感じた場合は決められた受診日以外でも早めに受診するようにしてください。
手術に際しての注意事項
術中・術後に予測される合併症
【術後炎症】
手術後に炎症により、角膜が浮腫んだり、眼圧が上がることによりしばらく見にくいことがあります。点眼や飲み薬を追加する場合がありますが、1週間ほどたてば、回復してきますので、医師の指示に従って下さい。
術後屈折のずれ
手術の時に挿入する眼内レンズの度数は患者のライフスタイルのより、事前に狙い度数を相談した上で、術前検査の予測値により決定しています。
まれに、術前の予測値と狙いの屈折がずれる場合があります。ずれ幅が小さく、患者様の日常生活に支障がなければ、大きな問題となりませんが、大幅に度数がずれて日常生活に支障が出る場合は、挿入した眼内レンズを摘出して、新たな度数の眼内レンズを挿入する場合があります。
後発白内障
眼内レンズを支える袋(嚢)は透明ですが、手術後に濁ってきて、再度見にくくなることをいいます。
その場合、外来でレーザーでの濁った嚢に切れ目(切開)を加えることで、再度見えるようになります。濁りの破片により蚊が飛んだような飛蚊症がでる場合ありますが、時間とともに減ってくることが多いです。
眼内レンズが入らない
手術中、水晶体の組織が弱い場合、眼内レンズを固定する袋が弱い場合、白内障が極めて重症な場合に眼内レンズを挿入できない時があります。
この場合には後日、眼内レンズを縫いつける方法で入れます。
術後感染
感染を起こした場合、軽度の場合は点眼、内服、点滴で回復しますが、重症の場合は手術が必要になります。
感染を起こしますと、急激に視力が下がったり、充血、眼痛といった症状がでます。
上記の症状が出た場合は、すぐにご連絡をください。
後嚢破損(破嚢)
眼内レンズを支える袋(嚢)が何らかの原因で手術中に破けることがあります。
破嚢が起こると、手術に少し時間がかかります。 また、破嚢の程度が大きい場合には、眼内レンズを挿入できないこともあります。この場合には後日、眼内レンズを縫いつける方法で入れます。